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 雪国の祭り 婿の胴上げに思う

雪国の奇祭

毎年1月6日になると六日町の八坂神社では「婿の胴上げ」が行われる。写真の奥に見えるのがその八坂神社。
ふるさとの友から送られた1枚の写真に驚いた。それは雪が殆んど無いに等しいからだ。
私が子供の頃は平地で3mは裕にあっただろう。半月もかけて集められた材木や大木がやや1mくらいに切り刻まれ、その高さ4mくらいまで積み上げられている。その頃は雪がしんしんと降り続き雪国ならではの光景が見えたものだ。
子供にすればそろそろ2学期の始まりに近い1月の6日。この日は同時に「花婿の胴上げ」が行われる。
私が子供の頃はよその地から前年に婿入りした男性がこの神社の本堂で胴上げされ家内安全家族の健康を祈ったとされている。
町内の大先輩(ご老人)がしっかりと音頭を采り、青年団がその教えを乞い伝統を学ぶといった行事だがその光景は都会では味わえない厳かで神秘的なものだ。
この写真を観ても火柱は4mあるだろうかという程度。以前は4mの上に更に4mもの焚き木で火柱はおよそ20mにも及び町はずれからもその神火は見えたものだ。
朝方になるとすり鉢のようにその部分は雪が解け、火の底はつまり4mほど下に下がっているのだ。
この神社まで私の実家は約1分くらいだったから毎年7日の早朝シャベルを持って何度もその熾(お)きをもらいに行ったものだ。茶の間の掘りごたつはその熾きで温める。2回目のしゃべるは大きな鉢に収めその神火で餅を焼いて食べるのが我が家の風習だった。神社に近い特権でこんなに健康になれたんだと今でも思っている。
遠くにいてもこの日(6日)だけは忘れたことがない。
この町は2年前に放送された天地人の兼続の生誕の地なのだ。いろんな意味で風景もすいっかり変わったが、この写真に観るようにやはり雪国は雪がいっぱいあった方が良いように思う。豪雪地帯と呼ばれるこの地で育った私は本当の意味で豪雪地帯の厳しさを味わってきた。
現在雪国には「消雪パイプ」が張り巡らされいるのは当たり前の光景だが、その消雪システムはこの地でそのアイデアが生まれた。井戸水は夏に手で触れないほど冷たく、逆に冬はなんととっても温かいのだ。そのためスプリンクラーの施された道路はたちまち雪が消え真冬でも道路を車が通るようになった。
そうした変化を実際にこの目で見届けているだけに冬はとくに複雑な気持ちになる。
故郷のみなさんには申し訳ないけれど、冬は雪が多い方が良い。
ここで実際にあったお話をしてみたいと思う。私が高校を卒業後は学校や職場の関係で東京・名古屋で10数年過ごし、その後故郷に戻ってのこと。夕食に隣町の寿司屋さんに飛び込んだ。板前さんに「雪が少なくっていいあんばいですね」と言葉を投げかけたときだ。板さんはいきなり不機嫌になり怒りだしたのだ。「冗談じゃないよ!雪国は雪で潤ってるんだよ。これじゃ商売あがったりなんだ!」と。
冬のレジャーが観光である商売人が多い関係で全てが関係しているのだ。不景気ならスキー場関係者は誰も外食になど出かけないという。雪国育ちだったはずの私は十数年の都会生活ですっかり故郷の実態を忘れてしまっていたのだ。
雪が降らなければこの神社でも「雪神様」に雪乞いをするくらいだ。
この写真を観て、やっぱり雪が少なくて良かったね!とはとても言えないのだ。

東北の地は、仮設住宅生活やまだまだやらなければいけない復旧作業に雪は苦しみ以外の何ものでもない。
早く「雪が降ってきたぞ」と心からおおはしゃぎできるようになって欲しいものだ。

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