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 新年に見た「つるの恩返し」

明日から仕事始めだという3日の午後。
私は忙しく過ぎた年末の残りの作業をと思い、波島教室(お稽古場)に向かった。
冬の装飾から新春の装飾に衣替えするためだ!

お稽古場に着くと中に誰かがいる気配・・・・・!?
そっと鍵を開け、中を見ると障子戸が閉まっている。 
中から聞いたことの無い音楽が流れていた。?????????
そっと障子を開け、かすかな隙間から子供のように覗いてみた。
正面に家元が目をつむってなにやら振付けに没頭しているようだった。
決して目を開けず、空想の世界に浸っているその姿は何故か神秘的だった。

ああ!こうやって振り付けているんだ・・・・・!
まったく入る暇もないそれは決して見てはいけない瞬間だったのだ。
もの音ひとつしても気が散って振付作業が出来ないと言われ、振付の場を一度も見たことがない。
今回は特に2月の公演に向け60曲あまりの振付をした。 凄い・・・としか言いようがない。
2月の作業は終わったはずなのに・・・・! この聞いたことの無い楽曲からすると、依頼されていた振付ビデオ作品の制作作業なんだ・・・・

私が障子の隙間から覗いている様子は気づかれていない。
ここで障子を開ける訳にはいかない・・・・!

仕方なく更衣室のストーブを点け、足を暖めながら仰向けになってメールを打ち始めた。
頂いたメールへの返信が済んでいないからだ!

何通も何通も15分も打ち続けていただろいうか・・・・・
「すいません! そのメールを打つピピピピっていう音が気になって振付けが出来ないんですけど・・・・・」。ビクッ!・・・・
それこそ夢中でメールに集中していて障子が開いたのすら気づかなかった・・・!

「悪い悪い・・・・! 分かった!出直して来るよ・・・」というと「装飾の変更でしょう! 仕方ない!手伝うから先に飾りつけを済ませて・・・・」
急いで正月用に飾りつけてお稽古場を後にした。

「覗かないで・・・と言ったのに貴方は覗きましたね! 何故見たのです・・・」まるで中で機を織るツルの物語を見ているようだった。
「覗かないでと言ったのに・・・・」この作品は今回の舞台でお弟子さんが踊ることになっていてその稽古に何度か立ち会ったせいか音楽がす~っと流れ出てきた・・・
まさに心を込めて機を織る姿を見てしまったようなそんな心境を味わった。
なるほど・・・、こうして作品が出来あがるんだ・・・・。

目をつむってどんな世界に入りこんでいたんだろう!?
芸術の世界の素晴らしさを垣間見た瞬間だった。
本番の舞台で「おつう」を目にする時、おそらく強烈に障子戸の向こうを思い出すことだろう!

まるで夢の世界に引きずり込まれたそんな出来ごとだった。

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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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