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 プロ根性はいつまでも同じ!

演出

もう20数年にもなるだろうか! 東北地方の山奥のまたその奥に「町おこし」を頼まれて数年その地域振興事業に関わったことがあった。
昔、大ヒットを飛ばした当時の青春スター(歌手)「三田明」を中心にプログラムを組み、その演出構成を手掛けたときのことだった。
この写真は、前座で演じた地元の皆さんが踊る「ひょっとこ踊り」の1シーンですが、この仕掛けは当然この町の人はどうなっているのかはまったく分からない。
これはクレーン車で20mも吊り上げる大仕掛けが施されている。 吊っている線はピアノ線なので夜だと肉眼では見えないのだ。
舞台背景はここにある茅葺の家がそれだ。つまり、楽屋になっているそのまた後(茅葺家の)にビル工事に使うあの大型クレーン車がスタンバイ。  昼のうちに綿密な打ち合わせと秒単位の指令がインカムで飛んでいる。
このシーンは「おら東京さ行くだ・・・!」の曲に合わせて踊っている二人の踊り子。
2コーラス目が終わり3コーラスに入る前の間奏で女性が宙に飛んで行くという設定だ。
間奏で右の男性が踊りながら女性にそのピアノ線をセットする。これはリハーサルをやることで3秒とかからない。
だから、突然宙に浮く女性に観客は聞いたことのないどよめきとなる。勿論、夜だからその線は全く見えない。
写真の高さの4倍は吊りあげる。これが驚きなのだ。この日は丁度中秋の名月で吊られた彼女はまるでお月さんまで行くのかと思えたほどだ。
1800人ほどいた観客のどよめきとその後の拍手、今でも忘れることは出来ないシーンだ。
これは当然プロの仕掛け人がこのシーンだけで20万もの予算で行ったひとコマなのだ。小林幸子のステージを担当しているプロに依頼して行ったもの。大成功でした!

と言って、今回お話ししたいのはここではない。(今日はもっと長文になるから覚悟を!)
実はこの後にいよいよ三田明の登場となる。
私は事前に、三田さんが何番目の歌が終わると客席に入って歌うからスタッフにショーが始まる前からその道(通路)だけは空けておくようにと伝えておいた。ここは「絶対空けるんですよ!」
それが大問題を引き起こすことになる。

歌謡ショーは順調に幕を開けた。私は客席後方のやぐらの上で総監督として指示を送っていた。
やぐらの高さは約3mほど。
さあ!その時間まであと1曲。 ところが下(客席)を見ると空けるべき通路はしっかり埋まっているではないか????
計画通りに進行させたい私としては下にいるスタッフ(女性)に大声でその席を空けるよに怒鳴りにも近い勢いで再度指示。もうそのスタッフの手には負えない。
仕方なく、歌っている最中に私はやぐらから飛び降りた。
「グキっ!」痛ッ!!!!  今まで味わったことの無い激痛が走る。 左足首を痛めたらしい・・・・
しかし、そんなこととは関係なくショーは進んでいる。
とりあえずお客様に心の声を上げ、叫ぶように訴えた。 その通路は万全ではないが確保できた。
はいつくばるようにやぐらに戻る。 もう気が遠くなるほどその激痛が増している。
「何でもいいから氷をいっぱい持って来て・・・・」それだけ言うのが精いっぱいだった。

ショーは大成功に幕を閉じ、1時間後に打ち上げパーティーだ。
打ち上げを仕切っていたのも私。 旅館には出演者はじめ、町長・助役、商工会長他お偉方が勢揃い。
もう完全に私は左足は着けず這うように皆さんの前に出た。
「今日はお疲れ様でした。何もなく無事に大盛況のうちに幕を下ろすことができました。皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。」と挨拶。 乾杯が終わって、大したことないですが念のため医者に診てもらいに行って来ます・・・・と宴席を後にした。 そこには病院はなく診療所だけ。
結局レントゲンが無いので痛み止めだけ打って町の病院へ行った方が良いと言われそのまま自宅までスタッフに車で送ってもらい翌朝病院に行った。
複雑骨折ということだった。

やっと治ってその町に再度ご挨拶。 この話は町中に広まっていたらしい!
勿論、途中で骨折を知った町長たちはその話で持ち切りだったのだろう!
痛みはそんな生易しいものでは無かったが・・・
勿論、観客の誰も私が痛がっていることすら知らない。本番中に口が裂けても「痛い」などとは言えないしね!

「あの人は素晴らしいプロ根性の持ち主だ!あの状態で何もなかったように最後まで仕切る責任感はちょっと真似のできるものではない・・・・」そう称賛されていたらしい。
その後、イベント企画は全て私の会社が任されることになり数億の振興事業へとつながった。

これは決して自慢話しをしているのではありません。
プロとはそういうものなのだということです。

ただ、衰えてないな~と感じたのは先日の波島陽子の舞台の合同稽古の時でした。
全ての準備をしながら、訂正訂正で遅れていた台本もっやっと前日に間に合うといった始末。
挙句は2日間もの徹夜・・・・

連絡はきちんととり、準備はしているはずでもやはり変更変更、また遅刻の連絡等々
そんな中、音響・照明・衣装・司会等々の確認のために進行は続く。
修正修正でやっかいなことも多い。
こうしてあげたら出演者は喜ぶだろうな~
このような演出なら観客は感動するだろうな~
クレーンで吊りあげたひょっとこのように、気持があれば良い案って浮かんでくるものです。

波島教室の生徒さんは口では語れないほど素晴らしい人ばかり・・・。 それと素人とはまた別問題なんですね。
思っていた以上に順調にことは進み夕方7時前には会場を後にすることができました。

さあ!みんなで食事にでも行きましょう・・・・とお手伝いして下さった生徒さんに波島は声をかけ、3~4人でレストランに向かった。
車を置いてから駆けつけたがまったく食事どころではなかった。
考えてみたら昼食もとれない状況だったことにそのとき気づいた。食べ物が喉を通らない!
「みんなが集まっているのに」、自分が体調悪いは理由にならない・・・・。その通りだ。
そうしたことが職業柄身体じゅうに染みついているのでしょうね。

あれからもう20数年経っているというのに・・・。  しかし、こうまでして打ちこめることがあるということは実に幸せなことだと思う。
「生まれて」「生きて」「生かされて」という言葉がある。
感謝が勇気に代わり行動できるところに人間の妙味があるのかも知れない。

素晴らしい舞台にしたい・・・と思わなければ何も高い上から飛び降りることは必要ないのだ。
生徒さんの喜ぶ顔を見たいがために頑張られるのかも知れない。

青春時代はもうとっくに終わりましたが、誰よりも青春しているような気がして幸せです。

プロフィール

岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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