2ntブログ

表現方法の極意

DSC_1449 (1)

 浅草雷門のお稽古場に通う生徒さんに「表現方法」を教えることが度々あります。
特に新舞踊を踊る場合はこの表現が非常に大切になります。
 波島陽子が舞台女優だっただけにお稽古していれば参考になるはずですがこればかりはやはり感性やセンスの問題なんですね。
 NHKの大河ドラマや朝の連続テレビ小説を観てもその差が実に如実です。昨今の作品は人気者を配し視聴率優先でのキャスティングは否めませんが、本物志向の私にとってはなんとも我慢ができないでいるところです。

 いつになるか分りませんが、波島教室で学ぶ生徒さん。 特に役者になりたいとする若者にはそこを意識し徹底的に鍛えています。
もし、この本物志向が通らないとしたら日本の伝統や文化は本当に近い将来廃れていくに違いないからです。

DSC_0868.jpg

 波島教室には、世界各国から日本舞踊の体験で多くの観光客のみなさんがやって来ます。 決まって口々に「美しい美しい」を連発。
 つい先日は「今回の日本ツアーの中で一番最高だった」と称賛され主催者側の波島は満面の笑顔でした。
これはおもてなしから来るお客様の実感なんだと確信しています。 昨今の観光地の各場所で、多くの観光客を前にこのチャンスを逃すまいと懸命になって商売をする姿を見ることが多いですね残念ながら。 これを決しておもてなしとは言わないと断言します。
 
 私が自信を持って言えるとすれば、まさに日本の伝統は心であろう。心があるから親切は伝わる。心があるから感動を与えるというところです。
役者は演者とも言いますが演じてはいけないのだと思います。矛盾していますが、これは決して難しいことではない筈です。 心のままに、まさに自然体で動くことで相手に感動は伝わる。
日本の素晴らしさを聞くと、外国のみなさんはこぞって日本人は親切と言います。そして日本は町が綺麗とも言います。 料理に至っては舌鼓を打ちながらその料理に感動してくれます。 ここが世界に誇れる日本の文化なのです。

 浅草では昨今「着物体験」といって多くの外国人がゆかたを体験し笑顔でカメラに収まる姿を多く目にします。 でも、そこに一抹の淋しさを見るのは私だけではない筈です。 本当に日本のことを語れる者があの姿を見たら残念に思うに違いない。
 ここまで多くの観光客に「商売」が先で対処していたとしたら、必ず近い将来日本の観光もおかしくなってしまうに違いないとその懸念を避けられないでいます。
 
 本物は笑顔となって還ってきます。私たちが多くの外国人に接していていつも思うことです。 お客様の顔を見ながら体験プログラムを進めていて、その都度工夫を凝らし瞬時に内容を変えるのはそこにあるのです。
 日本舞踊を見せたら喜ぶ・・・!! 違います。 興味があってしかも感動を添えられない内容は無に等しいんですね。それだけにお客様の言葉に一喜一憂するわけです。
 つまり、日本の若者に伝えたいのがそこにあるのです。 着物を着せたらそれで体験なのではありません。 歩き方、ポーズの取り方はそのまま写真に記録(きねん)となって残ります。 私たちは着物体験者を一人で送り出すことは決してありません。 着物は歩きなれない外国のみなさんには必ず途中で着崩れします。どこで写真を撮ったら良いかを知っている私たちが同行するのが一番大切です。
 
「優しい心、想いやる心、敬う心、感謝できる心、そうした人としての優しさに羽織らせたいのがお着物だと言います。波島の日本舞踊が美しいのはその心にあると言って過言ではありません。日本舞踊は心で舞ってこその伝統芸だからです。波島が作品を創るとき、生徒さんに教えるときのこだわりです」
つまり、美しさは外見でないことが分かりますね。 

DSC_1864.jpg

 写真に収まるときに表現できないのは、心の作り方が間違っているだけなんです。人はそれぞれ個性があって素晴らしいのです。

 特に役者やタレント希望者は憧れがとても強いことに驚きます。 人気女優に憧れることは間違ってはいません。 しかし、顔・形もさることながら体形や性格も人それぞれみな違います。
 写真は動きませんが、素晴らしい写真は見る人の心を動かします。 それは写真が生きているからでしょう。 「写真が生きている」、ここにこだわりたいですね。

 普段の写真を撮るとき、私は決まって「笑顔」を誘います。一般的に誰でも一番素直に作れるのが笑顔だからです。 それと、笑顔は決して他人に害を与えません。

 ただ、プロを目指す者への注文は徹底して「心の表現」を求めます。心が目に表れた時が満点なのです。 簡単のように見えますが実はこれが一番難しいようですね。
誰もが、悲しい時・嬉しい時、怒ったり泣いたりとその年齢年齢で経験して来ている訳です。 演じようとするから表現できない。
 踊りで言えば、お芝居で言えば、そこに作者の意図が必ずあります。その意図(背景)が理解できれば第一関門は通過でしょう。
役者は、それが瞬時にできてこそプロなんですね。 他人(ひと)の真似をするのではなく、自分(自分の容姿等)を知って自分の役作りで表情を完成させて欲しいと思います。
 
 映画で「水戸黄門」という作品がありました。 東映の月形龍之介の黄門様は圧巻でしたね。 東野英治郎・里見浩太郎等々歴代の黄門様がいますがまず月形龍之介の比ではありません。 まもなく14日を迎えますが、「忠臣蔵」の吉良上野介役でも月形龍之介の吉良は見事でした。
 浅野内匠頭役もそうです。東千代乃介・中村錦之助・大川橋蔵等々歴代の名俳優が演じましたがその俳優によって作品の出来は大きく左右します。
 宮本武蔵・遠山の金さん他沢山の時代劇。 私は着物を通じて語っていますのでどうしても時代劇を対象に語りますが、日本の伝統を、文化を、どうぞ正しく守り継承して欲しいと願って止みません。

 元号がまた再来年の5月から変わるそうです。私は、昭和と平成しか生きてきませんが、時代劇を通して特に江戸時代以降は誰よりも学んだ気がします。
社会情勢がそうであったからかも知れませんが、昭和30年代頃からの時代劇が一番素晴らしかったように思えます。
 そこには日本人らしい心が潜んでいたように思えてなりません。
素晴らしい時代考証が居て、素晴らしい映画監督がいたからなんでしょうが、それを演じる役者も本当に素晴らしかったと思います。
 人と人の心が希薄になって、どうして素晴らしい作品が出来るんでしょう。 感性に乏しい若者が勘違いをしてカメラの前に立つ。危険極まりないですね!

 家元波島陽子のブログにもこの自然体に触れていましたが、「素直が一番」、「自然体が一番」。 心からそう思わずにいられません。





プロフィール

岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
チーフ・プロデューサー
演出家

最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード