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時代劇の面白さ

泉岳寺

 時は将軍「徳川綱吉」の頃、つまり元禄14年12月14日はあまりにも有名な
赤穂浪士討ち入りの日。
 環境がそうだったのか、私の12月はクリスマスよりこの「忠臣蔵」のエピソ
ードをより学んだ月でもありました。父親が東映映画封切館の支配人を兼務していたこともあって、東映映画で本当によく学びました。

 勿論泉岳寺は知っていましたが、実際に訪れたのは14年ほど前。 東京に住
むようになってとくに浅草から銀座線で1本ですからね。
 今年は例年にない寒さで吐く息も白く余計身につまされる感を抱きながらこの
寺(泉岳寺)を訪れました。  東映映画と言いましたが、東映には花形役者が
多く「オールスター総出演」となるとその醍醐味は格別なものがありました。
 「知られざる四十七士」なるドキュメントを観ると、今更ながら江戸の民衆の
反響が大きかったことに驚かされます。 主君浅野内匠頭の処置に頭を悩ませた
将軍綱吉。 当時から「喧嘩両成敗」があったことを示す四十七士へのお裁き。
 知れば知るほど奥の深い出来事だったんですね。 面白くなければお客が来な
いことから描いた大石内蔵助のご乱行など、「なるほど」の世界です。 しかし、
現実は浪費するどころか「粥」をすすってその日を過ごしたというすさまじいも
のだったようです。 となると、討ち入りまでの信念というものは想像もつかない
厳しい生活をしながらその日(討ち入り)を待ったことになりますね。
 「お軽勘平」「矢頭右衛門七」「「神崎与五郎」「大石主税」等々どの義士をとっ
てもそこには涙の物語が隠されていましたね。
 討ち入り後、足軽であった「寺坂吉衛門」を蔵之介の命で使いに出したことで
今日まで詳細に渡って語り継がれたということになるのですが、その采配も見事
としか言いようがありません。
 上杉家が仕返しに来ないかと義士46名も毛利・細川・水野・松平家に分散さ
せましたがここでも多くの扱いの違い(ドラマ)がありました。

 舞台に、映画にと昭和の年末から新年に向けてはこの作品を上映すれば当たる
ことが保証されていたくらいです。 つまり面白かったチャンバラ映画ですね。
知れば知るほど壮絶でしかも日本人が最も好む美談の典型だった訳です。

折に触れ私は役者を目指す若者に非常に厳しい目でその経過を見守っていますが、時代には逆らえないのか本当に難しい時代に入りました。
 それは、本来の日本の伝統や文化から外れた「日本人らしさ」を欠いた役者しか見なくなったからです。 それを、役者を目指す若者に問うことすらできなくなって
しまっているようでなりません。

 つい最近、女子大生がスマホを観ながらもうひとつの手に飲物を持ちイヤホーンで自転車に乗って事故が起きました。 77歳の女性と衝突をし、転んだ女性は2日後に亡くなったそうです。
 私も、こうした光景を見るのはしょっちゅうです。 見ない方が少ないと言った方が正しいでしょう。 私は以前、便利さが人間を破壊すると言ったことがありました。 この便利さには常識すら奪っています。 それを聞いたり正そうとすると、「どうして!?」・・・と返って来ます。  電車に乗っても8割強がスマホを覗いています。  これで社会がおかしくならない訳がありません。 77歳の女性にはとても気の毒ですが起きて当たり前の事故でしかありません。
誰かを殺害(事故)して初めて気づく!? 遅いですね。そんなことは初めから分かり切っていないんでしょうか!? 人が死んでから法律化される!!??
 でも、少しだけみなさんはきっと日本人のいや日本の素晴らしさは知っているはずです。いやそう思いたいです。

 つまり、日本の文化伝統に触れながらと言っても、着物に着せられていることが分からないのです。 台詞(ことば)を発しても何一つ味がありません。
おそらく、そう遠くない2年か3年後には「時代劇」は消えてしまうと言っても過言ではない時期に来ています。
 人の心に触れる、感謝であったり謙虚であったり、真心であったりして「人としての感動」を得られるのですね。
 私は今年も約500通ほどの年賀状を投函しました。 感謝の心とか、出会いを大切に・・・というのであればもっと枚数があっても良いように思います。
今年もお歳暮を30件ほど出させて頂きましたが、感謝できる心をもっと大切にしないとな・・・とこの時期になっていつも思います。

 つまり、そうした人としての温かい心に纏うことで日本人らしいふるまいがついてくるのだと思います。 今流行りの短縮したことばでどうして美しいふるまいが備わるんでしょうね。
 役者を目指すんなら尚更のことです。 着物はとても優雅で清楚で美しいものです。 最近の大河ドラマや朝の連続テレビ小説など本当にひどいものです。
これをどうやって理解させ、そして本来の日本の美しい時代背景に合った役者を育てるかが大きな課題でしょうね。
 勉強したから時代劇の監督を出来るものでもありません。 そこには当然あってしかるべき感性やセンスのようなものが無ければいけないのです。

 韓国ドラマに『チャングム』という作品がありました。 脚本の素晴らしさもさることながら、おそらく役者や監督が素晴らしいんでしょうね。 日本も昔はそうでした。 現代のドラマは現代のドラマとしてなんの問題もありません。それが平成なんでしょうから・・・!  しかし、時代劇は日本の伝統的な文化であり伝統です。
剣を持ったらチャンバラです。 アクションではいけないのです。
 日本舞踊に関わりながらそのことが本当によく分かりました。 波島陽子は女剣劇の師淺香光代先生の下で多くを学びました。 そして、芸人の世界での厳しさも人一倍経験しました。 礼儀など言われなくても出来る女性ですが、挨拶ひとつが大切なんですね。 挨拶を「おはようございます」「ありがとうございました」と言えば挨拶と勘違いしている若者の多いこと。
 挨拶は心でするもの。つまり、演技も踊りも全て「心」の表現なのです。そこが分かればしっかりしたお芝居は出来て当然ではないでしょうか。
 若者はいろんなことを受け継いでこその伝統です。 今は今で正しいことは多くあります。 しかし、時代劇は別です。

 一生懸命学ぼうとする若者も勿論います。 その若者を育てるのが師の責務です。
しっかりとした強い信念をもって指導する必要があります。

 ただ、今の子は「甘えの構造」がずれていて知りもしないのに自己主張しがちです。自分を持つことは尊いのですが、伝統芸はそこが違います。
 
 この有名な忠臣蔵での画面の中でしっかりした「台詞」の言える役者を育てたい。
時代劇の面白さは、正しい日本の心がそこにあって初めて表現できる妙味なような気がしてなりません。
四十七士の墓の前で強くそう思いました。

素晴らしい演技で応えてこそ供養に思えてならないからです。  
こんな話を綴っていると山鹿流の陣太鼓が聞こえてくるようです。
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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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