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 心の持ち方 Ⅹ

私は以前専務として経営者の息子(二代目)の教育を任されたことがありました。目標を達成するには分析が必要です。就任して早々は勿論まず会社を知ることから着手です。然しながらここでもすごく矛盾を感じてしまうのですが、私が就けばすぐにでも変化が現れると経営者の心は期待過多になってしまうことでした。分析の結果はすぐに出ました。従業員はみな金の卵でした。しかしながらそれが殆ど機能していない。活かされていないのです。原因はやっぱり経営者です。私は社員の心の教育を手掛けることを先としました。勿論そう生易しいものでなどありません。堂々と心をぶつけ、話し合うことで仕事の張り合いや人生の楽しさを植え付けるべく行動しました。出勤の仕方、休憩の採り方、休暇の過ごし方、酒の飲み方、会議の目的や重要性、報告や連絡の大切さ、つまり仕事以前の常識ですが数え上げたらきりがありませんがひとつひとつ計画的に面白おかしく進めました。社員旅行ひとつとってもその楽しい過ごし方に矛先を持って行きます。旅行はバスに乗ったら連れて行ってもらえる?今まではみなそう考えていたようです。初めて私が組んだ旅行は今までに味わったことのない楽しい旅行だったと大好評でした。「旅行でもこんなに準備がされていたんだ!」と分かったそうです。本当は私が今まで企画制作を生業としていた訳ですから楽しくなって当たり前なんです。社内では従業員が一生懸命私に言われた内容を実行しようとしますがただ一人動かないのがその息子でした。彼は性格の優しい若者だと思っていました。しかし、朝礼に遅れて来るのも挨拶が出来ないのも残念ながら彼でした。私は入社前に彼と何年か接していましたから彼のイメージは出来ていました。挨拶が出来て腰の低い好青年というイメージでさすが二代目と見ていたのです。つまり外面が良かった訳です。毎朝掃除をし水まきをする私を見ても手伝うことのなかった彼には驚きました。率先垂範が大切と教えても長続きはしないのです。
決定的な彼の心を見たエピソードがあります。父親である社長は犬を3匹飼っていました。飼った経験のある人なら理解できると思いますが、犬小屋は毎日掃除をしないととんでもない匂いがしてきます。そこである日をきっかけに雨の日も雪の日も365日1日と欠かさず犬小屋に飛込み徹底的に掃除をし餌をやり始めたのです。動物は接すれば接するほど可愛いものです。私も20年ほど前までは大型犬3匹、ヤギにうさぎ、日本猿を飼っていましたがこればかりは愛情がなければ決して世話などはできるものではありません。当然会社の3匹はまるで子供のように私になついてそれは可愛いものでした。私が出勤すると車を見つけてすごい喜びよう・・・!大切にすれば犬でも分かる、ですね。
1年くらいしてからでしょうか?その中の1匹の様子がある日突然おかしいのです。毎日持って行く好物のビスケットも口にしなくなりました。何度も声をかけ励ますのですが様子がおかしい?ずーっと横になったきり動こうともしない。私は昔可愛がっていた猿を日射病で死なせてしまった経験があって動物の体調管理にも十分気を配りそれだけに犬小屋の清掃は磨きあげるように綺麗にしてきたのですが。
社長がゴルフで不在の日、あまりの急変に動物病院へ急いで連れて行きました。医師は懸命に手術を施してくれましたが末期がんということで二度と可愛い目を開けることはありませんでした。(つづく)


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