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 適齢期 5

私の母は素晴らしい人でした。決して我が家は裕福であった訳ではありません。成人になってそうしたことがはっきり分かるわけですが、母はとても手に多くの技術を持っていました。
和裁、洋裁、レース編み、編み物、組み紐、日本舞踊、三味線、琴、書道、ペン習字、極めつけは料理です。この殆どがプロ級の腕前でした。そんな母に父は相当助けられたはずです。厳格な家に育ちはしましたが、母は歌手の橋幸夫が大好きでとても柔らかな人間でした。私もその影響を受けました。
学校へはいつも素敵なセーターや長袖半袖のシャツなど新しいものを来て行けたのも母の余り毛糸等の作品のお陰でした。母から手紙が欲しいと知人の声。字の綺麗なのも自慢でしたね。晩年は病気で苦しみ(パーキンソン病)ながらも、ベットで俳句や川柳を嗜んでいました。私が物心ついた頃は自宅がいろんな教室になりました。今考えてみると皆さんお嫁に行くための準備をしていたようです。お茶の入れ方や着物を着たときの挨拶の仕方など本当にたくさんの先生でした。
芸者さんが着物を仕立てに頼みにくるんだから本当に上手だったんでしょう。突然にお客様がやって来てもありものでちゃんと美味しい酒の肴が出るんですから昔の人は素晴らしかったんだとつくづく思います。生徒さんが結婚するときは必ず招かれていたようですが、今で言うところの結婚相談所みたいな役割もしていたようです。習っているときに女性の生徒さんの性格等も掴めるわけですから良き紹介者だったでしょう。
勿論今みたいな斡旋料を取ったりしている商売とは違いますが、本当にお世話の好きな明るい母でした。私が知っているだけでも皆さん楽しい家庭を築かれたようです。申し上げたようにそれぞれがトレーニングを積まれた皆さんだったのです。授業の中でも世間話が先輩(母)としての教えだったのでしょう!
そんな母や女性を多く見て育ちましたから、私の家内がアイロンを掛けたり座ってきちんと洗濯ものをたたむ姿などは嬉しいほどの心の安らぎを得ています。
女性も男性同様毎日同じように働く時代になって、そうした家庭的な面を求めることは可愛そうな気もします。ですから出来ることは男性も同じようにやれば良いのです。
私は以前、奈良薬師寺の高田好胤管長から「母の愛情」ということで「親の姿・子の姿」の中でこんなまごころ説法を聞いたことがあります。今の母親と昔の母親の違いのひとつに「洗濯板」があると話されました。つまり、洗濯機の無かった頃はみな洗濯板で汗を拭き拭き子供の汚れた下着等を洗ったものです・・・と。その姿を見て育った子供たちだからこそ良い子が育つのだと言うのです。知らず知らずの内に母への感謝の気持ちが芽生えるんでしょうね!と。昔は「なるほど」と素直に聞く耳を持てていましたからこうした話はとても役立ちました。
家庭、学校、会社・・・とそれぞれ大切な人間修業の場がありますが、父親を立てる母親がいてこそ父親の威厳もあったようです。人によって経験の度合いはそれぞれですが、それも結婚するためには大きな影響を与えるトレーニングのひとつなんだと思います。

 人名、会社名等(著名人は除く)は全て仮名にさせて頂いておりますが
   内容は全て実体験であり本当にあったお話です。

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岡部俊雄

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