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 山椒大夫 1

男女それぞれに言えることですが、彼女が欲しい!彼氏が欲しい!と慌ててほしくない理由を述べて来ました。少しはご理解いただけましたか?
世の中に完璧な人などおりません。トレーニングを積んで自分を磨くということは完璧な姿を勧めているのではありません。育った環境によって、また本人の性格によっても経験も違うし感じ方もみな違って来ているのです。
私はまだ中学の入学式を迎える何日か前に、将来に大きく影響した出会いがありました。手に入れた真新しい教科書を母と見ていたときのことです。「どれ見せてごらん!」と母は各教科書に目を通していると一冊の国語の教科書のあるページで目を止めました。それは森鴎外の有名な「山椒大夫」です。
先にこの作品がどんな物語かを簡単に説明しておきましょう。
『岩代の国(今の福島県)から筑紫の国(九州北部)へ行ったままの父を訪ねて、越後の春日から今津までの道中を4人連れの旅人が歩いていました。まだ30歳くらいの「母」と13~4歳の姉「安寿」、12歳の弟「厨子王」、それに女中の4人。
夕暮れ時に一行は野宿の場所を探していました。そこに現れたのが「山椒大夫」という船乗りでした。親切に自分の家に泊めてやろうと言うのです。しかし、実は、山椒大夫は人買いだったのです。
母と女中は佐渡へ、子供たちは丹後の由良へと母子は引き離され女中は入水してしまいました。子供たちが買われたのが「山椒大夫」という金持ちの家で安寿はお茶くみを、厨子王は柴刈りをさせられていました。姉と弟は両親に会いに行こうと話し合い、お互いを励まし慰めあっていたのですが、それを山椒大夫の息子三郎に聞かれてしまいます。その夜、二人は三郎に引き出され、額に十文字の焼き印を押されてしまいます。小屋に帰って母から渡されていた守り本尊の地蔵を拝むと焼き印の痛みが消えたものの翌朝目覚めてその仏像を見ると、十文字の傷が出来ていました。年がいくつか過ぎて安寿は厨子王と一緒に柴刈りに出させて欲しいと申し出ます。厨子王は事前の相談がなかったのでとても驚きますが、山椒大夫は安寿が髪を切ることを条件に許可。翌日、厨子王とともに山に出かけた安寿は、守り本尊の地蔵を厨子王に渡して厨子王を逃がしました。その後、安寿は入水しますが厨子王は守り本尊の導きで山椒大夫の手を逃れ、果てには丹後の守に命ぜられたのです。父はすでに他界していました。厨子王は母を探すために佐渡に渡り、再会を果たすのです。』
この物語を、こたつで母が読んでくれました。「安寿恋しやホーヤレホ、厨子王恋しや・・・」と、母は一生懸命声に出して読んでいました。朗読に引き込まれすっかり物語に夢中になっていると、新しい教科書の上にぽたっと涙がこぼれ落ちるのを見ました。声も振るえがちですが言葉に出せない感動を覚えました。(つづく)

 人名、会社名等(著名人は除く)は仮名ですが 内容は全てノンフィクションです。
 【俊介の部屋】は平成21年6月4日にスタートしました。(毎日掲載しています)
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