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 おもてなしの心 6

名古屋に老舗の漬物屋があります。勿論今でも業界トップを走っていますが、私はその会社に23歳のときに裸一貫で飛び込みました。

東京でお菓子の栄太楼という会社に誘われ、その面接を受けていたときのことでした。
知人の紹介だったのでまるでお茶のみ話しのように喫茶店での説明だったのです。 従って栄太楼松坂屋店店長の隣りには専門店街の仲間である漬物屋(本社:名古屋)の店長がそこに同席していたのです。

ひと通りの説明を受け、まったくの余談に入ったときでした。
隣にいた漬物屋の店長がおもむろにこう切り出したことを今でも鮮明に覚えています。
「栄太楼はいいよな!こうして若い人がどんどん入って来るんだから! うちなんか酒粕にまみれて白衣もすぐに汚れてしまうほど、匂いもいろいろで若者なんか寄っても来ないよ・・・」等々
つまり愚痴オンパレードだったのです。
私もそんなもんかな~程度にしかその話に耳を傾けていませんでしたが、家に(居候していた千葉の伯母の家)帰ってなんとその話がとても気になり出し、翌日はわざわざその漬物屋の店長に会いに出かけていました。

S氏(店長)は「うちなんか興味持たなくたっていいよ!栄太楼さんに悪いじゃないか・・・・」と笑いながら更に愚痴を聞かせてくれました。
S店長は名古屋出身で東京へは派遣されて来ていたようです。
私はますます興味を抱く訳ですが、これが私の人生の始まりだったかも知れません。

一生懸命興味を示す私に、「それなら一度名古屋に見学に行って来るといいよ!」ということで2日後くらいだったでしょうか、S店長が新幹線代を払ってくれて名古屋に行くことになったのです。
名古屋での面接は鈴木勝義専務でした。
私の人生は後にこの専務との出会いで大きく変わっていったのです。

面接の後、本社の経理課長に案内されて製造工場へと向かいました。そこで見たものはまさにS東京店店長の言う酒粕の臭い(悪い意味ではなく初めて鼻をついた臭い)だったのです。まるで江戸時代から続いていたのではと思わせるほどの大きな土蔵風の工場も何か新鮮でした。
ここがあの大和屋守口漬総本舗だったのです。 肩書に「宮内庁御用達」が当時看板でした。
製造直売なので犬山の近くにある製造工場から出来あがった漬物の樽が運び込まれ、名古屋のど真ん中にある製品に仕上げる工場で最後は箱や化粧樽に入れられて完成させる場所でした。

当時はテレビドラマを一社で提供するほどの会社でしたね。
何か漬物っていうとそれが会社なら余計あるイメージを持つでしょうが当時は私もそう思っていた一人でした。

確かに、工場では白衣に漬物屋の前掛け、そして長靴。どう見ても若者が選ぶ会社には見えません(笑)
ところが、次に何店舗かの直営店に連れて行って頂いたときでした。
東京の百貨店で見た売り場とは異なり、老舗という言葉がピッタリの店づくり。まるでお着物を着たご婦人が暖簾をくぐってお買いものをする呉服屋さんのようなイメージだったのです。
愛知県知事が会長を担うほど名古屋は漬物の有名なところです。
名古屋名産として、「きしめん」「ういろう」と並んで「守口漬(奈良漬の一種)」は有名な人気商品だったのです。
知識の無かった私はその活気に驚かされました。

若者が嫌がる会社!? S店長の愚痴を納得できる見学が果たして出来たのでしょうか!?

(つづく)
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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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