2ntブログ

  芸術です、日本の心は

デンマーク

月日の流れの速さに改めて驚かされますね。

台東区立の中学校(7校)から選ばれた学生17名が毎年「国際理解重点教育」の一貫として現地(デン
マーク)に行って日本舞踊を披露したいので・・・と指導を依頼され今年で10年となりました。

10年、本当に感慨無量とはこのことです。
10年、私もこの事業に関わって強く思うことがハッキリして来ました。
この教育の一貫として求められるもの。 一番最初に日本舞踊を採り入れようと計画された団長(校長)
さんがたまたま私の故郷の小学校の後輩だったのです。
縁と言うものはどこでどんな形で現れるか分からないものですね。

当時の団長の情熱はそれは素晴らしいものでした。
この熱い気持ちの中にいる子供たちは幸せだ・・・と正直つくづく感じたものです。
今でも懐かしく思い出される「花笠音頭」。 赤い襷にスゲの笠。

ところがこの指導には大きな問題がありました。 それは指導時間です。
学校側の予定がいろいろあるにせよ、合計5時間で踊りを仕上げることと浴衣の着付け(たたみ方)
まで完成させるのは本当に至難な業でした。
ひとつだけ嬉しかったことは、やはり応募者の中から選ばれただけのことはあるな・・・という学生が
多かったことでしょうか!?
それでも、毎年毎年よくここまで仕上げたものだ・・・と指導者(波島)には頭が上がりません。

私は、指導者が指導しやすい環境を整えることに専念して今まで来ました。
厳しいようですが、それは心の問題ただひとつだったのです。
「挨拶の徹底」、「伝えることの大切さ」、「感謝できる心」、交流に欠かせない「笑顔の大切さ」を毎年
教えて私も同じように今年10年を迎えました。

10年は、教室を開校してやや同じ年月になりますが、考えてみたらこのデンマークの指導の年月と
同じに教室も歩いて来たんだなと思います。

彼らは台東区を代表し、日本の伝統や文化をデンマークの同い年の友だちに伝えに行く訳です。
子供たちどころか、引率の先生も浴衣を自分で着るなどという機会は一度もなく、何もかもが新鮮その
もの。  そうした点ではお稽古会場はとても新鮮です。

前述のように、日本の文化や伝統と申し上げましたが、私はこの10年の間に逆に悟ったことがあります。
それは、日本の素晴らしさ(文化)とは一体何だろう・・・ということです。

浅草で振袖を着せて外国人観光客に「着物を着て浅草を歩こう」・・・の企画を当社が初めて開業。
この企画は大当たりで多くの旅行会社からその依頼を受けました。
それが、今では年間2,000名もの来場につながっているんですから凄いとしか言いようがありません。

デンマーク指導でも、観光客の対応にしてもなかなか商売では出来ない領域に出会うことが出来た我々
は本当に冥利に尽きますね。

それは日本舞踊の素晴らしさの伝承についてです。
日本舞踊を指導するお稽古場や教室は全国にたくさんあるでしょう。
しかし、何の仕事(商売)でもそうですが、他との違い、つまり独自性です。 ここに気づくまで2年かかり
ました。 勿論、やっていることはスタートと変わりはありませんが、整理がついたというか確信を得たと
言った方が正解です。

つまり、日本の伝統や文化というのは「芸術」だということです。
多くの皆さんが会得しようと学んでいるのはつまり「技術」です。 日本舞踊もまったくその通りです。
私も芸事が好きで芸に対しては小学校に通い始めるころからその環境に居たように思います。

時代がそうだったこともあるかもしれません。
親戚が東映映画封切館をやっていたこと。 母親の着物姿以外に記憶がないほど、母はずっと着物姿
であったこと。 もっと言えば母は和裁を内職とし、多くの芸者衆の着物を縫っていたこと。
きっとこんな環境に居た子供も少なかったのではないだろうか!?
従って、時代劇のしぐさや振る舞い、その美しさは誰よりも熟知していた筈です。
時代劇に着物は当然。 挙句の果て歴史が大好きときては本当鬼に金棒でした。

最終的に「波島陽子」に出会うのもなるべくして成った極当たり前の人生だったのかも知れません。
先ほど、「芸術」と言いました。  そうなんです。日本人の素晴らしさはこの「芸術」にあると言えます。

日舞でも、華道でも、芸術の域に到達して初めて伝統を継承したと言えます。
全国にある日本舞踊の各流派に通う生徒さんやお弟子さんは何を学んでいるのか!?
それはまぎれもなく「技術」の習得なんですね。
日大のアメフト部に大きな社会問題が起きましたが、これこそが「技術」だけを追い求める指導者側の
欠陥でしょう。

私もいろんな指導者を知っています。
ジャンルこそ違え、多種多様の大先輩に出会うことも少なくありませんでした。

母親の影響でほんの少しだけ花柳先生に日舞を教わったこともありました。
そんなこんなの環境の中で、確信をもって言えることが見えて来たのが「芸術」と言う領域です。

販売店での経験で得たのが「心の応対」でした。
そのことが経営陣に伝わったのか私は指導者の領域に顔を出すことになったのです。
一体、私は何を従業員に教えたのでしょうか!?
キザと思われるかも知れませんが、それは「相手を思いやる心」それだけでした。
相手とは、時にはお客様でした。 相手とは当然仲間でした。
だからなんでしょうか、私は若いころからご年配の方には本当に可愛がられました。それは今でも私の
財産です。

基本的に、相手を思いやる心があれば「心の挨拶」が出来ます。 当然、心から感謝できる心も養われ
ました。
よく威張る上司、威張る経営者が居ますが大きな勘違いです。
怒ったりする行動もその通りです。 自分の思うようにいかないから怒る。まるでスーパーで駄々をこねる
子供と一緒です。

つまり、私がずっとずっと言い続けていることがこの「芸術」につながるんですね。
日舞でも、ある程度まで行けばそこそこ踊れるようにはなります。 しかし、芸能関係で言えば金の取れる
演者にはほど遠いのです。
作品の美しさはこの芸術が加わって初めて素晴らしい作品に仕上がるのです。
この芸術なら、日本人であれば本来誰でも持ち合わせているものです。
それはまさにまぎれもない「日本人の心」です。
外国人がどうして日本を評価し、これだけ多くの観光客が訪れるのか!? それは日本人の心がその
理由の殆どです。

日本舞踊はまず技術の習得からと思われがちですが、心はそう簡単に形成されるものではありません。
波島陽子の舞台が素晴らしい、美しいと評価して下さるのは技術は勿論のこと、彼女の心が芸術という
領域にすっぽりはまり、表現できない美しさになるんですね。

これは、身近にいる私が言うのではなく、波島からお稽古の機会を得、波島に触れることでそれが分かる
ようです。
日本の舞踊家の中でも数少ない財産であることは間違いないでしょう。

デンマークに行く子供たちにとって、波島から教えを乞えることこそ日本の文化・伝統の継承のように
思えます。
アメフトのトップを走っていた日大の出来事がそうであるように、間違った指導、間違った運営をしている
様々なジャンルのトップ集団の面々。
まして、自分が偉いなどど錯覚している部署の若者は気の毒でたまりませんね。

日本の文化は・・・とこの時期、伝統に触れながら「日本を紹介」している人が後を絶ちませんが、商売と
してやったら必ず衰退します。
オリンピックが終わって2~3年後、おそらく私の言ったことが当たっているはずです。

本来の日本の文化や伝統はとても控えめであるからです。
日本の伝統や文化ってそれほど素晴らしいものなんですよ。







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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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