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 あいさつ 6

今考えると付き合って欲しくって挨拶しようとしているのでなく、研修会で話せるような状況って起きるんだろうかと思っていましたので苦労したのかも知れません。
暫くして相手も私が会釈していることは知っていましたのでそのタイミングで彼女も返してくれました。声に出そう声に出そうとしますが軽い会釈が精一杯。それでも心の中では小さな声で呟いています「お・は・よ・う」・・・と。
何日かして小さな声から順に「おはようございます」が言えるようになりました。彼女の声は思っていた通り可愛らしい声でした。お互い段々と声もはっきり出せるようになり笑顔も添えて気分爽快の朝となっていきました。だからと言ってバス停では何も話せずただバスを待つだけの毎日。
曲がり角物語は次に発展する日を迎えました。それは最終バスに乗り遅れそうになり飛び込むように車内に入ったときでした。乗ると同時にドアは閉まりましたが、私は飛び込んだその場のつり革につかまり息を切らせ下を向いたときです。私の前に座っている女性は曲がり角の彼女だったのです。顔が合った途端、「今晩は!乗り遅れるところでした・・・」、と照れながら話す私に初めて見せる笑顔で「帰りはいつもこの時間ですか?」と声を掛けてきたのです。その時は本当にひと言ふた言でした。
翌朝昨日のことはすっかり忘れ、また同じように曲がり角でばったり。「おはようございます」、ずっと前から交わしているようなごく自然な挨拶が誕生しました。バス停までの世間話、そして席も隣同士。私の会社のことや彼女が富士銀行に勤めていること。私の田舎の話等々曲がり角物語から楽しいバス通勤物語へとドラマは進行していきました。
近所に住んでいてもどこの誰かなど知りません。ただ曲がり角の彼女として会話を交わせるようになったそれからは今までにない清々しく楽しい朝が繰り返されるようになりました。
当時は携帯があるわけでもなく連絡先を聞いたりしませんからそれ以上に発展はありませんが、曲がり角から名古屋駅までの数分がときめきの世界(時間)であったことは確かです。挨拶が人の心を開くって本当です。
曲がり角で「おはよう」と言えてなかったらきっとバス通勤物語は無かったでしょうね。実感として挨拶の効果を身をもって体験した若い頃の貴重な思い出です。
新入社員はとても興味深くこの話に耳を傾けていました。(つづく)

 人名、会社名等(著名人は除く)は仮名ですが内容は全てノンフィクションです。
 【俊介の部屋】は平成21年6月4日にスタートしました。(毎日掲載しています)
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