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 友だち以上 恋人未満 5

就職先が決まってからが長かった。彼女が私に対する思いを知れば知るほど辛く重い日々が続きます。私が古かったのかも知れませんが私には彼女の存在は劇団の仲の良い友だちの域を脱していなかったのです。彼女の中では私がはっきりとした恋人だったようです。それは態度で感じていました。それだけに怖い気持ちもありました。私もまもなく名古屋へ行くわけですからそんな話をしたら彼女はどうするんだろう・・・・と。どこの会社とは告げませんでしたがまもなく名古屋へ行くという話を切り出しました。驚いたことに卒業したら私も一緒に行くというのです。同棲してでもの構えでした。私は自分で生活するのでさえやっとなのに、それと自分のやるべき何かをやっと探せたと思えたのが名古屋だっただけに本気で打ち込みたかった。彼女のこころを想うと本当に辛い気持でした。でも、彼女は若いし社会人になればまた心も変わるでしょう。来年就職活動をする彼女に私は精一杯の話をしました。8月2日、川崎駅前のパーラ(喫茶店)での話、夏休みということもあって一段と可愛い姿に「ああ!今日告げなければならないんだ・・・」と正直複雑でした。
思い切って神に任せての発言です。「いろいろ話していて美(みい)ちゃんの気持ち分かったよ!でも僕はまだ若いし頑張らなければならないことだらけ。だから名古屋で頑張りたい!」会社の名前はとうとう最後まで告げませんでした。あんなに手紙くれたのに・・・とか、連絡はどうするの・・・とか言われましたが、今の彼女の気持ちが怖いくらいで連絡をとったりしていると何か打ち込めないような気がしたんです。一番の原因はまだ私が若かったんでしょうね。神に任せた言葉とは、「僕が頑張って、美ちゃんも就職をしてそれでも二人の気持ちが変わらなかったら今度は大人として付き合っていきたいと思うんだけど・・・」。「僕は夏男だし、美ちゃんが社会人になった1年目、つまり2年目の今日8月2日のこの時間(夕方4時)に二人がそれぞれそれまで気持ちが変わらずにいたらここでまた会おう・・・!」と告げました。勿論反論や反対が続きましたが、3時間ほどして泣く泣く了解がとれたのです。その後のことなど分かりません。きっとこの2年の月日で彼女は私なんか忘れるに違いない。私も自分を見つめ直すに丁度良い期間だと思ったからです。こんな発言が出来たのも当時の私には結婚とか女性の存在というのが自分の進路を変えるほど大きなものではなかったからだと思います。人生ですから彼女との結婚もありだったのかも知れません。その人その人の歩き方でみな違うんですね。さすがに涙を抑えることの出来ない別れでした。当時は携帯があるわけではないので会社名を告げなければまったく音信不通です。私がその後一通の手紙も出さなかったのは返って思わせぶりになってしまうと思ったからです。まさに友だち以上恋人未満を体験したエピソードです。それと名古屋の新しい職場はまさに私が探していた会社でしたからその後その職場での打ち込みようはとても他人(ひと)が真似の出来るものではありませんでした。そしてこの会社で私が大きく成長していきました。それは面接をしてくれた専務との出会いの素晴らしさがあってのことでした。     (つづく)

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