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 夏まつり 2

私は東北地方の祭りの演出を手掛けたことがありました。 今年もまた始まりますが!昔から張りぼての大蛇を湖水に浮かべ伝説の「大蛇退治」がメインの祭りがありました。
町の方針で今から20年も前にその張りぼてが豪華なセンサーで動くメカ大蛇として登場することになったのです。砂浜で退治に出発する武将たちの出陣式。ホラ貝を合図に小舟が集まる。乗りこんだ武将は威勢よく湖水に出て行く。さあ!そこにメカ大蛇の登場です。
衣装は映画等で使う鎧かぶとを身にまとっているのでとても幻想的なシーンがそこに(湖水)生まれる。
大蛇は精巧に出来ているのでまるで湖水を本当に泳いでいるようにも見える。効果音も駆使して臨場感満点。砂浜では一般のにわかカメラマンが今か今かとそのシーンをカメラに収めようとしている。
武将たちが大蛇に近づこうとしたその時でした。1艇のモーターボートが大蛇のシーンを直前で撮ろうとエンジンをふかして近づいて行くではないか! ***テレビとロゴの入ったTシャツはまさにテレビクルーだ。
彼等は一番良いアングルを収めたかったのでしょう。ところが砂浜で観ている人たちには完全にその絵は壊されてしまったのです。
確かにテレビカメラには素晴らしい映像を収めることが出来たでしょう! でも砂浜で観ている観衆にそのボートはどう映ったのでしょうか?そんなことは考えるまでもないことです。
どこの行事でもこうした光景を見ることがあります。テレビのスタッフを見ると我々は特別なことをやっている人間と思ってはいないか? 私が総合責任者でしたから、即ボートを引き返させました。しかし既に遅しです。イベント終了後局の責任者を呼びました。「誰の許可で本番中湖水にボートを出したのか?」、責任者も言われれば分かったようで町長にお詫びしていました。
祭りはみんなが楽しむもの。もし映像を撮るのであれば事前の打ち合わせと許可が必要でしょう。これはニュースとしての取材だったのですが、これが局に金を支払っての祭りそのものの番組制作であったとしても観衆が楽しめる範囲は空けておかなければなりません。
浅草の仲見世でタレントを呼んで番組制作をしているカメラスタッフをよく見かけますが、観光客を完全に無視しています。有名なタレントが来ればみなさんキャーキャー言って珍しさと興奮を抑えきれずに群がって来ます。その一般客を整理しているスタッフが完全に勘違いしているのです。
これは大蛇の取材で湖水に飛び出したスタッフとどこも違うところがありません。浅草寺の責任者や商店街の責任者もそこを決して間違えないで欲しい。テレビ局やタレントは決して特別な人ではありません。
その祭りを楽しむ環境をそれこそ多くのスタッフ(関係者)で作り上げないと本末転倒になってしまいそうで心配です。 祭りはテレビ局が作るのではないのだから!

 人名、会社名等(著名人は除く)は仮名ですが内容は全てノンフィクションです。
 【俊介の部屋】は平成21年6月4日にスタートしました。(毎日掲載しています)
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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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