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 計算から生まれる感動

ずっと以前、帝国劇場で「蝶々夫人」を観たときのことだ。
佐久間良子演ずる蝶々夫人、相手役はなんとウエストサイド物語のジョージーチャキリス。クロードチアリーなど多彩な出演者。物語はあまりにも有名なので省略しますが、ドラマの最後の最後に素晴らしい演出が待っていた。
戦場で戦っている恋人が戦死したとの知らせを受ける。長時間の舞台は仲の良い二人を存分に表現させておいて最後は死というくくりでその悲しみを膨らます。満開の桜の木の下で彼女は戦死を知らせる電報に観客に悲しみの後ろ姿を見せたるのだ。
一瞬照明はシルエットになる。おひきずり(着物)を纏ったその姿はまるで京人形のように美しく全ての観客が息を呑む。クライマックス(演出)をこの一点に絞ったと言って良いほど素晴らしい絵がそこにあった。
そして彼女は恋人の後を追って桜の木の下で自害する。
それだけでも十分悲しいのに自害してまもなく戦死したはずの彼が帰ってきたのだ。つまりその電報は間違いであったことになる。
舞台の素晴らしさに魅了され、それから舞台を多く観るようになった。以前からおふくろに連れられて何度か歌舞伎は観たことはあったがミュージカルや帝劇等でのお芝居はまた別の醍醐味があった。
ロンドンでのファントムオブザオペラを友人にチケットを取ってもらい本場の舞台に興奮した。ミス・サイゴンは7回も観に出かけた。当時の本田美奈子の素晴らしさにも出会うことができた。
台本とキャスティングが一番大切と思っていたがそれ以上に演出の素晴らしさは何度も味わった。ここが映画やテレビなどとは違うところだ。勿論臨場感とともに手に汗握ったりすっかり舞台と一帯になってしまう。
映画やテレビと違うのは舞台は決めどころが待っている。そこが演出家の見せどころだろう。
それ以降すっかり感化され子供番組(キャラクターショー)や歌のステージ、記念行事等の演出、結婚披露宴等の演出を20年も手掛けた。考えてみれば感動を提供する側に立ちたかったのだろう。
どうしたら感動を与えられるだろうと考えるだけで良い案って浮かんでくるものだ。結婚式の司会者は沢山見ているが披露宴後新郎や新婦側のご家族に「これから一緒に飲みましょう!」とその家族たちだけの2次会に誘われた司会者も少ないだろう!
きっと相当感動し感激してくれたに違いない。確かに演出は計算されたところはあるが、そこに心が伴わないとおそらく本当の感動は生まれないと学んだ。

 人名、会社名等(著名人は除く)は仮名ですが内容は全てノンフィクションです。
 【俊介の部屋】は平成21年6月4日にスタートしました。(毎日掲載しています)
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岡部俊雄

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