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 心の愚かさと貧しさ 3

選曲された音楽の影響もあるでしょう、舞台装飾や音響効果、照明、ナレーション担当、当然舞台裏のスタッフがいてこその真剣勝負です。打ち上げは感動と興奮を引きずった学生の笑顔とはしゃぎ声でいっぱいです。本当に先生にも見せてあげたいとどんなに思ったことか知れません。
この子たちも勿論青春を謳歌し一生懸命恋愛もするのでしょう。私の経験で言えることは、本気で何かに打ち込める人は大丈夫です。夢があったり目標のある人は例えどんな人であっても生き生きとしているものです。
中には「こんな割の悪いバイトなんてやってられないよ!」と言った人がいなかったわけではありません。要領よくその場をしのげる人も確かにいることはいました。
私が30歳代前半の頃に出会ったアルバイトとの思い出をお話しましょう。企画制作を営んでいた私は学生アルバイトは欠かせない存在でした。社員は当時8人ほどでしたがアルバイトに対する依存度は高く、多い時は1日120人ほどのアルバイトが勢揃いします。各現場に配置し行動しますが、当日現場での売上も発生することが多く、アルバイト生だけのチームは本当に心配でした。
その中に大学3年のA君がいましたが、その彼の仕事ぶりは本当に目を見張るものがあったのです。お客様の催事担当者からの感想や意見は社員を超えるものでした。積極性に富み、責任感があり、人当たりが良く、統率力があり本当に非の打ちどころがないのです。 思いがけず仕事が遅くなったり、内容が厳しく疲れたであろうと思ったとしても若者特有の活力や笑顔を添えて「只今戻りました」と挨拶をし、売上の計算や処理を完璧にこなし「お疲れさまでした」と帰っていきます。
4年生の夏のバイトが終わる頃、私は当然彼をスカウトするべくアタックしたのです。「出来たら当社でA君の力を発揮して欲しいんだけど・・・」と。すると彼からこんな返事が返ってきました。
「ありがとうございます。でも私は1年以上同じ会社でアルバイトはしないと決めているんです。私の実家は山形で印刷屋を営んでいまして、私が長男ですがいずれ実家の後を継ぐつもりで25歳まではいろんな会社でバイト経験をし、社会勉強、人間関係、いろんなことを学び将来の自分の経営者としての役に立てたいと思ってこうしていろんな会社でお世話になっています。ですから同じ場所に長くはいられないのです」。きっと学校ではモテるでしょう!現に会社では一番の人気者でした。彼女がいないなんて考えられないほどの素敵な男性でした。それもご法度のようでした。つまり彼女(ガールフレンド)は当時の彼には邪魔な存在であったんですね。
A君が結婚するときは是非私を呼んで欲しいと別れ、彼が34歳の春に招待状が送られて来ました。彼が見つけたお相手はみんなが羨むほど素敵な女性で盛大な結婚式でした。世の中には実際にこうした若者が存在しています。勿論、私の人を見る目も、自分の行動に対する責任についても改めて大きな影響を受けました。(つづく)

 人名、会社名等(著名人は除く)は仮名ですが内容は全てノンフィクションです。
 【俊介の部屋】は平成21年6月4日にスタートしました。(毎日掲載しています)
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岡部俊雄

管理人 : 岡部俊雄
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