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 日本文化の担い手 波島陽子の魅力

波扇会
2011年10月9日日曜日午前11時
波扇会(はせんかい)の幕は上がった。舞台に立ったのは、その殆んどが若い生徒さんたちばかり。波島のホームページを見た人はどんな生徒さんが多いのかは一目瞭然ですが、実に若い生徒さんが多いのが特徴。

若い人が多いというのに、経験が浅いという生徒さんが多いというのに、それぞれの踊り子の舞台は到底初めてとは思えない熱演者ばかり。それも各作品がそれぞれの踊り子に合っているから不思議だった。
波扇会と言っても、勿論発表会だが、それも「ゆかたざらい」と言っていい舞台。
当事者はまさか自分がこの時期に舞台に立つ経験ができるなど思ってもいなかった人たちが殆んどだった。
緊張はしているもののその殆んどが客席からため息まじりの拍手の嵐。これには驚いたが当人たちはそれ以上に興奮し感激したようだ。これは師匠のホームページに掲載された生徒さんそれぞれの寄せられた感想文でもよく分かる。
なぜこんなにも好評だったのだろうか?
観衆の声がそれを物語っていた。皆さんもいろんな発表会を観に行かれてお気づきでしょうが、舞踊の会で気づくのが先生(師匠)が上手いのは分かるが生徒さんの踊りには目を覆いたくなる場面も多々見受けられる。
波島も、日頃から「上手く踊ろうとしなくても楽しんで踊れたらそれで良いのです」と言い続けている一人だ。
それにしても、どうして多くの出演者がこんなにも楽しんで見てもらえたのだろうか?
今回はその辺の話しをいろんな角度からひも解いて知ってもらいたいと思い「波島陽子の魅力」と題して綴ることにしました。

波島の芸歴
もう一度波島陽子のホームページのプロフィールを見てからこのページに戻って頂けるとありがたい。
最大の特徴は波島陽子が舞台女優だということだろう。それもその殆んどが時代劇の作品。更に、大衆演劇の第一人者である浅香光代師にその教えを乞うたことだ。知っての通り女剣劇がその舞台。
小学生時代に見たNHKの大河ドラマ(時代劇)にはまり、夢は舞台女優へと駆け巡る。
上京し、愛弟子となり芸養女とまで登りつめたのは先生の指導に合わせその天性によるものが大きかったはず。

作品の一部をご紹介しよう。

舞台3
舞台中央の娘役が当人です

特に時代劇は、舞台に上がれば上がるほどに日本舞踊の重要性が分かるのです。上京する前に地元秋田で数カ月間徹底して着付の勉強をして来たと語る本人。
舞台に立つようになってから徹底して「日舞の力をつけたい」と浅香流はもとより西川流や花柳流の先生から何年も何年も個人稽古に通い続けたのです。それも浅香先生には内緒で自分の時間を殆んどその時間に充てたとか!
「身のこなし」という表現がありますが、本番の舞台と秘密練習で培った芸の力は大きかったはずです。

舞台2
子役に教えられることは大きかったとか(左が本人)

こうして浅香劇団で全国の大舞台を多く経験し、海外公演をこなすまでになりました。お芝居では浅香先生の男役に対しその相手役の殆んどを務めることになったのです。

舞台1
油がのってくると舞台は一段と映えたようですね

現在、全国各地から「振付ビデオ」の制作を依頼され、特に「新舞踊」に振付を施していますが、これが大好評で大変な忙しさ。依頼主は一般の愛好家ではなくその殆んどが各流派の師匠のみなさんからです。
「波島作品はどうしてそんなに素晴らしいんでしょう・・・・!」、リピーターが多いのはこれで少しは理解できたんではないでしょうか?
つまり、20年もの舞台経験と真似の出来ないほどの研究熱心さが素晴らしい作品へと繋がっているんですね。
一様に、「先生の作品は本当にストーリー性に富み、まるでお芝居を観ているようです」と言われるのはそこに理由があるようです。
生徒さんの中には、「早乙女太一が大好きで大衆演劇を観ているうちに私もあんな美しい日舞を踊ってみたい」と入会の動機を語る生徒さんが多い。
ところが、波島の作品は大衆演劇に見る舞とは一線を置いているのが特徴。新舞踊でも、日本舞踊のような美の追求を怠らない振付師(波島)がそこにいるからです。
だから、完成した作品は本当に味のある訴える力があるというのか実に美しい仕上がりを見せています。

生徒さんには徹底的に基本を教え込み、妥協せずコツコツコツコツと忍耐強く生徒さんに接しています。
ここで、初めの話に戻りますが、各教室の発表会での先生との差についてですが、波島教室の指導は本人の力量をくみ取り事前の準備をしっかりととることでそれぞれの生徒に合わせた指導方法を生みだしている。
生徒数が多いのでこの作業は気の遠くなるような準備なのだ。おそらく生徒さんはその準備をしてから生徒さんとのお稽古に臨んでいることを知らない人の方が多いのではないだろうか?生徒さんの都合で2時間連続でお稽古する場合がありますがこれが一番きついようですね。
つまり、手を抜くことの出来ない指導者だから余計そうなんだと思う。

経験に裏付けされた芸の力

舞台5
豊かな表現力は積み重ねられた深みから湧いてくる

生徒さんの中には女優やタレント、また舞台役者を目指している若者も少なくない。
目指す者にとって共通している点はさすがに良いものを知っているということだ。いろんな教室を覗いてみて尚波島教室に憧れて入ってくる。その者たちはCMに出演し、実際にゴールデン番組でダンザーとして活躍する者、ミュージカルに出演している者。波島は自身の若い頃を思い出すという。
忙しい人ほど貪欲に修行の場に身を置いて活動を続ける。憧れで門をたたく者もいるが芸の世界ほど厳しい世界はないのではと思えるほどこの世界は甘くない。波島はそれを知りつくしているだけに指導には熱が入る。

舞台6
お稽古の合間に入る舞台にも花を添えている

現在はお稽古(教室での指導)回数が多くなかなか全国にまでは出かけられないが、祝賀会や披露宴、またディナーショーで関東地区を中心に舞を披露している。

よしや吹け
散るも色香の他ならぬ
花には風を思いかへさむ


ふきのとうやつくし、菜の花と言ったらまさに希望に満ちた春を思い浮かべることができる。上の和歌は王朝文化を代表する作品だが、当時からこの日本の文化は心に贅沢な「遊び」として「茶」「生け花」と同じように愉しまれたようだ。
見学や体験に行きたいが日本舞踊はどこか敷居が高いようでという意見をよく聞く。

豊かな日本文化のゆりかご
本当は、こうした文化は実際には庶民の中から出てきたものだということを波島はとてもよく理解している。
従って日本舞踊は特に精神的な拠りどころであるとも言えるのだ。
波島はときどき生徒さんに「お稽古場をあなたのもうひとつの居場所にしてね」と言っているのもそこにある。
波島の描く作品の世界は、たゆまぬ努力と多くの学びを源とし、精神的なものを大切に日本人の自然観みたいなもので実に上手くまとめあげている。

自然を愛し人を愛する心。 言葉では簡単そうに聞こえるが「愛する」とは見返りを求めない愛なのだ。
それでいて人一倍「感謝」の心根は強い。
私は、波島教室に通われている生徒さんに声を大にして本当は語りかけたいことがある。それは、先生と過ごす時間の大切さだと思っている。お稽古時間以外、普通はあっても5~10分の時間だろうと思うが、お茶をしているほんの数分の中で先生の温かさを十分吸収してほしい。
お稽古時の指導の中でそれを感じ、すっかりフアンになっている生徒さんが多いのも事実だが嬉しいことだ。
まるで「おかえりなさい」「行ってらっしゃい」の家庭のような温かさが充満している。
おしゃべりが大好きな先生だが誹謗中傷など勿論のこと、人の噂ばなしなどこの教室ではいっさい聞くことができない。まだまだ「ありがとう」をしっかり言えるのは先生で、素直にありがとうと口に出せない人も少なくない。
私がここで言っている「ありがとう」とは言葉で発することではなく、感謝の心を抱いた結果から出てくるその人の気持ちを言いたいのだ。

嬉しいことは、若者が多いのに非常に性格の良い人が多いこと。言いかえれば、自ら「日本文化に触れたい」と門をたたく生徒さんが多い訳だから大正解だと思っている。
「感謝」と「素直さ」、着物を着てそれが身についたら鬼に金棒だと思っている。
波島を通して、彼女の教室はまさに豊かな日本文化のゆりかごと言っても良いだろう!

日本の心
私はこの日本の心が大好きだ。ご存知のように日本には素晴らしい四季がある。この四季に関わる季語や枕ことばで遊ぶだけでも心が癒されるのだ。波島は雪深い秋田で生まれ育ち、まさに美しい大自然とともに成長したようだ。世界各國が注視している美しい日本。特に和食などが日本の老舗として宿をそのまま諸外国に移し「いらっしゃいませ」と教育を受けているが、どんなに真似をしようとしても素晴らしい日本の心までは真似ることができないのだ。日本人の持つ本来の美しさは日本人の血とでも言おうか体の中に流れているものが私たちを支えているのだから!
思いやりやしぐさは日本人の心があって成り立っている。だから着物を着ている時のしぐさつまり身のこなしにはそれぞれに意味がある。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と言われるように、指導者となって尚控えめな姿は美しい。その人の長所を惜しみなく褒め、上手く出来れば自分のことのように喜ぶ。
たゆまぬ研究心は芸の世界を生きるものとして更に力をつけてゆく。盆栽を育てる職人のように素晴らしい作品は愛情あってこそと思うが彼女を見ていてまさにその通りだと学ばせられる。


島陽子の時代
年賀状に、こんなコメントが載っていた。「いよいよ波島陽子の時代ですね」・・・と。

波島陽子は決して人を押しのけて前に出ようなどとすることも思うことも一切ない。つまり、控えめな人物の典型であろう。いい関係をつくる愛とでも言おうか「先生といると穏やかで優しい気持ちでいられます」と笑顔を返してくれる生徒さんが多い。
心の底にあるのは、本当は「芸より人間を伸ばせ」と言い続けているようで嬉しい。決して人真似なんかする必要はない。「あなたはあなたであればいい」。これが冒頭に述べた初舞台の結果なのだ。

名選手だったからと決して名監督になれる訳ではないとよく言われるが、これだけ一生懸命打ち込んだ芸の世界に身を置いた者が、「機会があれば子供の頃に夢見た大河ドラマに出てみたい!」ときっと心の奥で思っているに違いない。
独立後、役者として活躍の場を追い求めるか教室を開くかで迷った時期はあったはず。
私はすでに「名監督(立派な指導者)」だと思っている。全国の各お師匠さんが波島の作品にほれ込み、「近かったら直接指導を仰ぎたい」と絶賛だ!そしてこうも付け加えている。
「直接陽子先生から教えてもらっている生徒さんが羨ましい・・・」と。

年賀状にあったように「波島陽子の時代」の足音が本人の性格のように静かにそっと近づいているような気がします。まさに日本文化の担い手として生まれてきたような人ですね!


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